5:守人

 最近、校内が騒がしい。
 以前から生徒達は嫌になるくらい五月蝿かったし、落ち着きがないのは今も昔も変わらない。
 今の世界情勢は間違っている、から始まって、やれ○○さんと××君が付き合っている、だの、次の試験には何ページが出るだの、特に教師のゴシップには興味津々だった。
 それが悪いとは言わない。
 噂の程度に良い悪いはあるにせよ、何かしらの反応が返ってくるということは存在を認識されていることだから。多少なりとも、彼等の心の中に影響を与えることができるということだから。
 一番恐ろしいの“無”だ。
 何も気付かず通り過ぎてしまうことが一番怖い。
 この頃の騒がしさには何処かしらその“無”の気配がした。
 “例のあの人”が復活してからだ。
 感情が感じられない。
 ざわめきにも意味がない。
 ただ、騒音の中にいるよう。

 守らなくてはいけないものがある。
 その為にはどんな手段を講じても構わない。
 この学校という名の小さな“箱庭”を守ること。
 そこにいる全ての人たちを守り抜く。
 それが、今此処にいる彼等の唯一の共通した目的だ。

 「では、職員会議を始めます」

 張り詰めた彼女の声が教員室に響いた。







たわごと