ボンバルリーナの指示は正確で、且つ早かった。
 ディミータは彼女の指示に従い教会へと向かう。マンゴジェリーとガスのところにはジェリーロラムが向かっているはずだ。
 今頃になってまたあそこが問題になるだなんて思いもしなかった。いや、それとも、今まで何も問題にならなかった方がおかしかったのか。
 どちらにしろ、起こってしまったものはしかたがない。
 ノックも何もせずに、乱暴に扉を開け放つと、ディミータは教会の中へとずかずかと入り込む。
 「デュト様、ちょっと失礼します」
 と起きているのだか眠っているのだかよくわからない長老に口だけの挨拶をし、そのまま、奥へ奥へと進んでいく。
 目当ての扉を――やはり豪快な音を立てて――開く。
 「……ディミおねえちゃん?」
 きょとんと此方を見つめ返してくる瞳が二対。
 一つは珍しい金色の瞳の仔猫の眼。
 「――珍しいな、ディミがここにくるなんて」
 もう一つは、エメラルドグリーンの切れ長の瞳。
 「マンカス…」
 「ん?」
 晩御飯食べていくか?とまったく緊張感のないことをきいてくるリーダーを、一瞬、張り押したいという衝動に駆られもしたが、深呼吸をしてそれを沈めると、ディミータは端的に述べた。
 「ジェミマがいなくなった」

*   *   *

 「だから、同じこと何度も言わせないで。きいてなかったの?」
 苛立たしげにディミータはいう。
 「“ジェミマがいなくなった”これで何度目?一度で理解してよ」
 一度、ディミータがミストフェリーズから聞いたことをそのまま伝えたら、そのまま、こうだ。
 シラバブが心配そうに彼女たちを見上げ、傍らにあったパンダのぬいぐるみを抱きしめる。
 「そんなことはわかってる」
 「じゃぁ……」
 「俺がききたいのは、“どうしていなくなったか”だ」
 「そんなの……知らないわ」
 「ディミ!」
 「事実だもの!!」
 半ば怒鳴りつけてくるマンカストラップにディミータもついつい怒鳴り返してしまう。
 「私だってねぇ……!」
 知りたいのは此方だって同じだ。
 それを、さも、此方に非があるように言わないで欲しい。
 「――……あのね」
 そう反論しかけたディミータを遮り、シラバブが言う。
 「さっき、ジェミマがきたようなきがする」
 『……!?』
 いつごろ?と、マンカストラップは――幾分冷静に――シラバブに訊く。
 少しだけ考え込むような素振りをみせ、シラバブは「さっき」と答えた。
 「さっき……レイハイドウでお兄ちゃんとおじいちゃんといっしょにいたとき」
 すぐかえっちゃったみたいだから、よくわかんない。としシラバブは結ぶ。
 言葉を途切ると同時にシラバブは唇をきゅっと結び、俯いてしまった。
 ディミータはそんなシラバブの様子をみて、マンカストラップと視線を合わせる。
 「――ここでぐちぐち言ってても仕方ないわね」
 「あぁ」
 「……馬鹿みたい」
 「そうだな」



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好きな猫ほど書くのは難しいと思います。