あぁ、もう本当に世話の焼ける……。

 ミストフェリーズはひょいと塀を飛び越えると、走り出した。
 目指すはシラバブの言っていた“ユーレー屋敷”。ミストフェリーズ達が“廃屋”と呼ぶ数年前に打ち捨てられたボロ屋敷だ。
 スキンブルシャンクスはミストフェリーズとは反対方向に向かっている。どちらかが、見つけられればよい。

 自分の許容範囲くらいちゃんと認識しておいて欲しいね、まったく……。
 年上なんだから年下に手間かけさせないで欲しいよ。
 ……もっと、自分を大切にしてもいいのに。

 ――泣きたいときには、素直に泣いていいんだよ。

 本当、嫌になっちゃうね。

 泣きたいときに泣いて、笑いたいときに笑っておきなさい。
 誰も、君を責めたりしないから。

 嫌に、なる。

 でないと、泣けない大人になってしまうよ。

 ――馬鹿。
 他人に説教する前にまず自分はどうなのさ?
 何でもかんでも他人優先で、自分のことは後回し……。
 自分の意にそぐわない事でも、皆の役に立つならって――それが上に立つ者の役目だって……冗談じゃない。
 あんまりそんなことばっかりしてると、いつかハゲるって。絶対、胃に穴空く。
 でも、たとえそういってみたところで、彼は仕方がないと言って寂しそうに微笑うだけだ。
 それが、リーダーだから、と。

 ……それだったら、リーダーなんて要らない。
 自分達が求めているのは、そんな空っぽの虚像の英雄などではない。
 そんなものは必要ない。
 彼だから、上に立っていて欲しいのだ。

 もっと、周りも見て欲しい……。
 これは我が侭だろうか。
 上にいろといっておきながら、下も見ろと。
 余りにも、彼に沢山のことを要求しすぎているのだろうか。
 でも、それでも、求めてしまう。

 結局、皆自分勝手なんだけどねー。
 おせっかいで、やさしくて、そして何よりも自分勝手。
 だからこそ――。
 「嫌じゃ、ないんだな、コレが」
 厄介ごとは大嫌いでも、大好きな皆から掛けられる迷惑は大歓迎――。
 ミストフェリーズはぽつんと声に出して呟いた。


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いつまで続くのかって?……聞かないで下さい(切実)。
多分、そろそろ詰めだとは思うんですが……。

何にせよ、誰かを好きになるってのは最大の我が侭だよね、ってそういう話。
あ、別段変な意味はありません。