「あんたがやってくるのも随分久しぶりだねぇ。こんなところに来れるって事は暇なのかい?」 「いや、久しぶりに君の顔が見たくなってね。うっかり隣街との会合をキャンセルしてきたさ」 「あんたねぇ……そんなことしていいの?」 「まぁ、代理を立てたし、大丈夫だろう」 「……ちなみに誰を?」 「泥棒二人組みさ」 「また……会をぶち壊してくれっていってるようなもんじゃないか」 「いいんだ。儂はあいつらがどうも気に食わん。少しは痛い目に遭ってくれた方が清々する」 「――この間のことでかい?」 「あぁ」 「……一応、皆大事には至らなかったんだよ?」 「それでも、どんな形であれ、この街に害を成すようなヤツラは好かん」 「――損な性格」 「おいしいところどり、といってくれ」 * * * 「グリザベラに逢ったって」 「君が?」 「いいや、ジェリーが」 「……そうか」 「あの日から、もう二十二年も経つんだね。そして、あの時からは十一年……」 「君は、まだグリザを許していないのかい?」 「多分、私が彼女を許すということはないよ。今迄も、そしてこれからも、ね」 「――後悔、しているのかい?」 「今更だね」 「後には引けない、か」 「……明日の舞踏会には、こられるのかい?」 「残念ながら、明日こそ抜けるに抜けない仕事が入ってしまってね……でも、途中で何時間が暇ができるから、その時に少しだけお邪魔させていただくよ」 「――辛くないのかい?」 「何が?」 「マンカスをはじめ、大半の猫はあんたのことを誤解しているよ。私は、嫌だね」 「……辛いのは、理解されないことでも、誤解されることでもないよ」 「――?」 「信じてもらえないことだ」 * * * 「それじゃぁ、今日はそろそろ退散しよう」 「もう行くのかい?」 「帰って、マンゴとランプから報告を受けなきゃいかんからな。それに、代理になってくれた礼もしないと」 「そう……」 「それじゃぁ、舞踏会で、ジェニエニドッツ。ジェリクルムーンの加護がありますよう」 「あぁ、あんたもね、バストファージョーンズ」 ジェリクルムーンの御加護が、ありますよう。 |
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