それほど親しかった記憶はない。 ほぼ同期。 ある意味幼馴染。 親友の恋人。 そして、あの子の同居人。 彼女についての認識など、その程度のものだった。 「さて。お姫様は何がお望み?」 と、訊いてみたが、ボンバルリーナは答えない。うつむいて、シーツを握り締めるだけだ。 「リーナ?」 「…………」 今度は瞳を見て、もう一度。しかし、やはりボンバルリーナは答えなかった。 「仕方ないなぁ」 苦笑し、カーバケッティは寝台の上に上体を倒す。ごろんと仰向けになって、天井を見あげる。ほどなくして、ボンバルリーナの小さな笑い声が聞こえてきた。 「かわらないのね」 「何が?」 「カーバは、いつも、やさしい」 面と向かってそんなことをいわれても。優しくした記憶など、実は、ない。ただ、基本的に世の女性全員に対しては敬意をはらうようにしているから、それが、いわゆる優しさというやつに映ったのだろう。 「リーナみたいないい女、放っておけるわけないじゃないか」 誤解とはかくも美しい。 「……そんなふうにいってくれるのは、カーバだけよ」 そこで会話がまた途切れてしまう。 沈黙が嫌で、カーバケッティは口を開いた。 「具合、悪いんだって?」 「今は、それほどでもないわ」 そう微笑む彼女の顔色はあまりよくない。 「きちんと休んだほうがいいよ。身体に障る」 「大丈夫よ。たいしたことないから」 「でも……」 お腹の子に、障るだろう?とは訊けなかった。 「いいの。大丈夫」 そこで再び会話が途切れる。 困ったことに、カーバケッティのボキャブラリーも途切れた。状況が状況なだけに、迂闊なことは口には出せなかった。これが、ランパスキャットなら無神経(というよりも、鈍感なだけだろうが)、マンカストラップなら天然(というよりも以下略)さをもって、色々といってしまうのだろうが。残念ながら、カーバケッティは紳士だった。それも、心の底から紳士だった。うっかり女性の地雷を踏んでしまうかもしれない発言なんて、できるはずもない。 ネタはある。 ないのは勇気と度胸だけだ。 それに、ここにきて、最悪の予感というか予想というものがあった。 「……カーバ」 「何?」 「ありがとう」 「――……リーナ」 後が、続かない。 ありがとう、なんていわれる覚えすらない。 相手の善意が心苦しいなんて思ったのは、初めてだ。 「――あのね、カーバ」 ――――……来た! とカーバケッティは思った。 タイミング的にも、シチュエーション的にも完璧だ。これは、絶対に「本当はね……××が●●で△△なの」と続くはずだ。 潤んだ瞳にほんのりと薄紅に染まった頬でボンバルリーナは見つめてくる。この状況で上目遣いは反則だ。極め付けに、焦点が若干定まっていない。 …………病人のようだ。と、カーバケッティは思い、すぐに、そもそもボンバルリーナは体調が悪いのだから病人なのだということを思い出した。 「私――……本当は、」 と、そこでボンバルリーナは言葉を切った。 神様――……どうか!! 一番、カーバケッティが恐れているのは、 『実は、おなかの中にあなたの赤ちゃんがいるの』 というヤツである。恐ろしいなんてものでもない。ノストラダムスでアンゴルモア大王なくらいに恐ろしい。 ぶっちゃけた話、それ以外なら何だって彼女のいうことをきいてやろうとさえ思っていた。 ……だって、それならまだ、ランパスと本気でタイマンはったほうがマシ……。 もしくは、ぶらりスキンブルシャンクスと二人旅だ。 ――末期である。 「ちゃんと、いわなくちゃ……って、ずっと思って、いて」 ろくにボンバルリーナの話すら聞こえていなかった。それでも、やけに彼女の声が響く。 身に覚えなんて、これっぽっちもない。 先に天へ昇った仲間に、亡き両親に、くそじじ……もとい、デュトロノミーに誓って、ない。 でも、100%否定ができない。 何故なら、カーバケッティが男で、ボンバルリーナが女だからだ。生物学的には、男と女さえいれば、子供ができる。 覚えがなくとも…………。 責任を取るのが男である。いや、むしろ男ならばとらなくてはならない。 そんでもって、せめてものお詫びにきちんと認知して、養育費払って、後は……私生児にも遺産がわたるように遺言状書かなきゃ……。あぁ、そうだ、名前……どうしよう……。 カーバケッティの180度ズレた思考を打ち破ったのは、ボンバルリーナの声だ。 「――嘘を、ついたの」 へ?と間抜けな声を出さなかったのは幸いだ。 訥々とボンバルリーナは話す。 「いつのまにか、話が大きくなりすぎて……とりかえしがつかなくて」 さっぱり何の話だか見えないが、とりあえずカーバケッティは黙っていた。深刻そうな表情を作って(勿論、違う意味では十分深刻なのだが)、相槌を打つ。 「――……だから、別に、ランパスとはなんでも、ないって……いえなかった」 「!?」 ――ちょっとマテ。 「おどろいてる?……当然よね。今まで、さも彼女面して……となりに、いたんだもの」 おどろいたもくそも…… 「悪いなって……、ずっと。嫌っても、軽蔑してくれても、かまわない」 だって、そんなこと一度も―― 「ただ――これは、ぜんぶ私のせいだから」 「ちょっとまって!」 思ったよりも大きな声が出てしまって、カーバケッティは慌てて口をつぐむ。 「――ごめん」 「ん」 ボンバルリーナはゆっくりと首を左右に振る。 一度大きく呼吸をし、カーバケッティは切り出した。 「ええと――……つまり、何?君と、ランパスは付き合ってるわけでもなんでもなかったってこと、でいいの?」 「そう」 「――周りが、カッサとタンブルの次くらいに公認カップルっていってたのは間違い?」 「えぇ」 「ディミとかマンカスとかいわゆる信用できる情報筋からもそういうふうにいわれてたけど、それも違う?」 「もちろん」 「ランパスも――君と同じ考え?」 ボンバルリーナは大きく肯く。 カーバケッティは、ボンバルリーナから視線を逸らし、口元に手をやり、しばしの間考え込む。 「訊きにくいことをきくけど……」 「どうぞ」 「ランパスとエッチした?」 ぐーで殴られた。 「どこまで話したかしら?」 と、すっきりとした顔でボンバルリーナはいう。 「――できれば最初からおねがいします……」 サンドバック代わりにされた顔が痛い。 これだから女は怖いんだ。やっぱり女性になんて逆らうべきものじゃない。 「最初、ね……」 ボンバルリーナは寂しそうに笑うと、「どこからが、最初かしらね」といった。 「――初めて会ったのはいつだったかしら?」 「それって、俺との?」 「もちろん」 「なら、俺が11のときだ」 と答えると、ボンバルリーナは指を折って何かを数える。 「じゃあ――少なくとも、それよりも4年――5年は昔からね」 「出会うまえ、から?」 「そう」 ふぅん。と曖昧にうなずく。 何かがおかしい。 カーバケッティがボンバルリーナと初めて会ったときに、ランパスキャットもボンバルリーナと初めて会ったはずだ。 『あんなにきれいな子、はじめてだね』 『つんけんしてるだけじゃねぇのか?――かんじ悪い』 と、交わした会話を覚えている。 それとも――知らない間に出会っていた? 浮かんだ疑問をすぐに追い払う。それは考えにくい。 だって、彼女は―――― 「生まれたときから、ずっと傍にいたの」 「生まれたとき?」 「えぇ。私の母親と彼の母親は同じところで働いていて、部屋も隣同士だったから」 ちがう。 これは――彼は――ヤツじゃない。 「毎日一緒に遊んだわ。他の子はみんな大きくなってたから、大人の手伝いで忙しくって。同世代は、私と彼だけ。私が6つのときに、母親が私を連れてあそこを出るまで、ずっと一緒」 そんなに小さなころに会えるはずがない。 ありえない。 「それって――」 「また会えたときは本当におどろいたわ」 だって、彼女は、赤線にいたはずだ――――。 「……リーナ」 「なに?」 カーバケッティは、「『なに?』じゃないだろう!!」と怒鳴りたいのを必死で抑えた。 「嘘はよくないな、リナ」 わざと、“リナ”と呼ぶと、ボンバルリーナは応えるかのように眉をひそめる。 「君は、ランパスとはそんなに小さなころからの知り合いじゃない――そうだろう?」 「そうよ」 「は?」 ボンバルリーナはさも当然といわんばかりだ。 「カーバ……あなた、私の話きいてた?」 ふん!と、形のよい胸をそらす。 「聞いて……たけど」 もっとも、聞いているだけだったともいえる。 「だって、君は――ランパスが、好きなんだろう?」 「私は、ランパスとは付き合ってるわけじゃない――そういわなかった?」 言った。確かに、そんなことを言っていた。 「でも――」 話の流れ的には、どう考えても、『別に、ランパスと付き合ってるわけじゃないんだけど、でも、私はランパスが好きなの』とくるはずだ。そりゃあ、もう。最近の世の中のお約束的にそうきてもらわないといけない。 「じゃぁ、――……いったい誰なのさ?」 もしくは、ここで、『まだわからないの?』ときて、『――あなたよ』で結ばれるパターンだ。 だが、残念(でもないが)なことに、それだけはありえない。 「まだわからないの?」 ボンバルリーナは苦笑し、満足げな響きで、続けた。 「――――……タガーよ」 「……た・ガー…………?」 無意識に反芻すると、ボンバルリーナは微笑んだ。 「そう。タガー。意外?」 「いや――」 意外もくそも……考えすら及ばなかった。 ボンバルリーナは、「そう?」と訊くと、いたずらっこのように笑ってみせた。 「意外にみえてくれないと、困るんだけど」 「え?」 「なんでもない」 とにかく。とボンバルリーナは続ける。 「私は、タガーが好きなの。此処にくるよりも前から、ずっと、ね」 「それでどうして俺が出てくるわけ?」 別に、ボンバルリーナが誰を好きであろうが、それは彼女の問題だ。もしくは、彼と彼女の問題。 「――だって、カーバは、ランパスが好きでしょう?」 「うわ、ごめん、その語弊のある言い方やめて」 そんな単語を聞いただけで気力が失せる。 ボンバルリーナも言ってしまってからそう思ったようで、身長に単語を選んで言い直す。 「えぇと――……カーバは、ランパスの……何?親友?マブ?――……とにかく、一番の友達でしょ?」 なんとなくどれも違う気がしたが、じゃぁ何なのかと訊かれても答えられなかったので、カーバケッティは曖昧にうなずいた。 そんなに、綺麗な存在ではない。 「だったら、私が、ランパスの隣にいたんじゃ嫌だろうなぁと思って」 「別に。だって、それは俺がどうこういう問題じゃないでしょ?大体、俺が何ていおうが、やりたいようにやるんだろうから、いってもムダだし」 「でも」 「つーか、いって聞くようなヤツだったら俺がこんなに苦労するはずがない」 ボンバルリーナはこちらを一瞥すると、瞳を伏せた。考え込むように首をかしげ、もう一度視線を戻すと、「なら……」と口を開いた。 「なら、私が、自分の都合のいいように利用してるだけだっていっても、同じことがいえるかしら?」 「――」 そんなに、綺麗な存在では決してない。 そも、互いの対人関係にすら興味はない。 「一つ、言わせてもらえば」 それでも。 「人をつかった駆け引きはあいつのほうが君よりも数段上だと思うよ」 それだけはゆるさない。 「万が一にも、あいつを利用しようなんて思わないほうがいい。間違っても、君のためにはならない」 「そういう女々しいタイプにはみえないんだけど?」 「だろうね」 「?」 「あいつじゃなくて、俺がゆるさない」 ぷっと、ボンバルリーナは吹き出した。そのまま、珍しく爆笑し始める。 「あははははは、あなた、それ本気でいってる?」 「悪いね」 とカーバケッティは肩をすくめる。 「本気も本気。超本気。これ以上ないってくらいに本気の話だ」 「あははははははは」 ボンバルリーナがこんなに笑うなんて、初めてだった。 しばらくして、ボンバルリーナが一通り笑い終えるのを見届けると、カーバケッティは声をかけた。 「おさまった?」 「大丈夫――カーバが、真剣な顔してあんなこというから」 「言わせたのは君だろう」 拗ねたようにいってみる。なんだかとても、してやられたような気がしてならない。 「……カーバは、やっぱり、やさしいのね」 「リーナ、その話はもうやめよう?」 これ以上聞いたら、自分が惨めになるだけだ。 応えるように、ボンバルリーナはすとんと寝台に身体を倒した。 「誰かにね、優しくしてもらいたかったの」 ゆっくりと瞳を閉じる。 「――ランパスがね、優しくないっていってるんじゃないわよ。誤解しないでね。でもね……ランパスは、ぜんぶ知ってるから」 静かに深く息を吸って、そっと吐き出す。 「だからね、いつもいうの。『今だけだぞ』『おまえなら、大丈夫だ』『いつか、きちんとおまえを愛してくれる男のところにいけ』『おまえが、いちばん好きな男と一緒になれ』って」 ひどいでしょ? と、同意を求めるように(もっとも、同意なんていらなかったのかもしれないが)訊いてくる。 「私が欲しいのは、そんな言葉じゃないのに」 そこで言葉をきると、ボンバルリーナは口を噤んだ。瞳を閉じたまま、動かない。眠ってしまったのだろうかと思って名前を呼ぶと、はっきりとした声が返ってきた。 「カーバなら、私の欲しい言葉をくれるんじゃないかなって思った」 吐息だか溜息だか最早わからない呼吸をすると、ボンバルリーナはカーバケッティの手を取った。 「買いかぶりすぎだよ、リーナ」 「でも、カーバは、私の欲しい言葉をくれたわ」 「そんなことを言った覚えはない」 「――――私を、叱ってくれたわ」 目の前に引き寄せ、甲を這わせ、指と指を絡める。 「さっき。全部話したときに。叱ってくれたでしょう?」 「……叱って欲しいだけなら、いくらでも叱ってくれるやつがいるだろう?」 「私が甘えてるのを思い出させるだけよ――そんなの、いらないわ」 手、おおきいわね。と、ボンバルリーナは突拍子もなく言い出した。 「カーバは、家事も得意だったっけ」 「誤魔化さないで、リーナ」 ゆっくりとボンバルリーナの指をほどき、ぎゅっと両手で彼女の手を包み込む。不思議そうに見返してくる瞳を見据えると、にっこりと、これでもかというくらいの笑顔を見せてやった。 「ごめんね、俺は、リーナに何もしてやれない」 ボンバルリーナはうつむき、反射的に手をほどいて逃げようとする。 めっ!とちびっ子にしてやるように片手で手首をつかみ、空いているほうの手で無理やり拳を作っているボンバルリーナの手を開かせ、今度は自ら指を絡めた。 「俺は、ランパスじゃないから、君を慰めてあげることはできないし、優しくもできない。君が泣いていてもキスをして抱きしめるわけにはいかないんだ。まして、タガーでもないから、君を受け入れて、君が本当に望むことをしてあげることはできないんだ」 「――――」 「でもね、君の手を取ることはできるよ」 ボンバルリーナの細い肩が小さく震えた。 「キスをすることも抱きしめてあげることもできないけれど、隣にいて、手を取って君の気の済むまでずっと傍で話を聞いてあげることはできる――――リーナ、俺たちは友達だね?」 「……」 「無理しなくていいんだよ」 * * * いつの間にか、窓から差し込む陽の光はなくなり、気付けば星明りと月だけが部屋の中を照らしていた。 小さな寝息をたてて眠るボンバルリーナの背中を毛並みに沿って撫でてやる。 仔猫じゃあるまいし。と思うと自然と笑いが漏れたが、何だかもう同じもののような気がする。 「――入ってきたら?」 カーバケッティは薄く開いた扉に向かって声をかけた。 「大丈夫。眠ってるよ」 するりと隙間から身を滑らせて入ってきたのは大柄な白地に黒ブチ猫だ。 「はい。交替」 起こさないように気をつけながら、しがみついて眠る彼女を引っぺがして、無理やりランパスキャットの腕の中に押し付ける。 「――――……嫌味か?」 「他に何かいえないわけ?」 「オツトメご苦労さん」 「そっちのほうがよっぽど嫌味だよ」 あーぁ。とこれ見よがしに溜息をついて、腰掛けていた寝台に横になった。 「いつからきいていた?」 「最初から」 「だと思った」 大方、出て行ったふりをして、扉の前で座り込みデモしていたのだろう。なんだかんだで、結局ボンバルリーナのことを一番心配しているのは彼なのだ。 「俺ってつくづく損な役回りだよねぇ」 「貧乏性なだけだろう」 「ごもっともで」 くぁぁ。と欠伸をする。ついでに、両手と両足も思いきりのばして、伸びをした。そのままじたばたとしばらく手足を動かして、ぴたりと動作を止める。 「お前、女が見てないと本当にだらしないんだな」 「いいんだ。野郎にいいところ見せてもしかたない」 「ああ、そうかい」 カーバケッティはしばらく静止したまま、無言で天井を見詰めていたが、ふと、思い出したかのように口を開いた。 「――……結局、具合大丈夫なのか聞きそびれた」 そも。それが今回の原点だ。 「やばい、妊婦さん泣かしちゃったよ、俺……胎教にわるいかもしれない」 「…………お前も案外鈍だな」 ほれ。とランパスキャットは、置き去りにしたままになっていた薬の入ったバスケットを指差した。 「ジェニーのくれた薬が入っている。よくみてみろ」 いわれるままに、カーバケッティはバスケットにかかった布を取り外し、中をのぞいてみた。 “これですっきり!二日酔いにさようなら” “胃の粘膜をばっちり保護!” “女の子の強い味方!” “頭痛もちのあなたに!” 「――――」 何これ?と、喉の奥から声を絞り出す。 「二日酔いの薬に、胃薬、整腸剤、頭痛薬その他諸々」 「だって……すっぱいもの、食べたいって、いったって……」 「気分の問題じゃないのか?」 「マンカスを、追い出したって……情緒不安定ってやつなんじゃないの?」 「情緒不安定っていえば情緒不安定かもしれんが……あいつはなんだかんだで、タガーと一番つるんでるからな。 そのとき見たくない顔の一つや二つあるだろうよ」 だから、 『あいつは連想ゲームでもしてるのか?』 といっていたのか。 「ちなみに、俺は避妊には万全の注意を払って気を使っている」 もう、突っ込む気力もない。 「すっげー損した気分」 「あきらめろ。そういう星の下に生まれたんだ」 ランパスキャットは、にやりと笑うと「賭けは俺の一人勝ちだ」といった。 「何の賭けだよ?」 「『カーバケッティは据え膳食わずにいられるか』。お前、信用ないのな。ディミもマンカスも『絶対ムリだから何かあ る前に止めてくれ』っていってたぞ」 だから、残ってたんだ。とにべもなくいってのける。 返せ!俺の純情!!と叫びたかったがもう遅い。 カーバケッティは両手で顔を覆って、本日何度目になるかもうわからない溜息をついた。 「――食っときゃよかったよ、据え膳……」 ランパスキャットはそれをみて、低く笑いを漏らす。 その表情が滅多にないくらいに優しかったことをカーバケッティは知る由もない。 |
end コンセプトは「カーバ受難編」。 テーマは「カーバケッティは据え膳食わずにいられるか」 でした。最期の賭けはある意味私の賭けでした。よかったです、据え膳食ってくれなくて(笑)。 今回判明したのは、とりあえずカーバの思考回路は少女漫画だということでしょうか。 好き勝手書いたせいか、随所にネタが散らばってます。 フォルダ名は「カーバとか。」だったし、タイトル仮題は「紳士は金髪がお好き(仮)」でした。 カーバ受難編は機会があったらまた書きたいです。 カーバには絶対に女難の相が出てると思う、そんな今日この頃。 |