1

 他人の事なんて、きっと、興味が無いのよ、あなたは」
 「確かにね」
 ククッと、彼は咽の奥で哂った。
 「確かに、僕は他人の事なんて興味はないね。自分と、ウチワのやつらだけで手一杯だ」
 「うそつき」
 にべもなく言うと、彼女は彼の上にのし上がった。
 「ウチワのものにも、あなたは興味を持ってない。関心があるのは、自分のことだけ。他はどうなってもいいんでしょう?違う?」
 「心外だなぁ」
 彼は彼女の柔らかい髪に指を絡め、彼女の昼と夜の色の瞳を、黄金の瞳で覗き込んできた。
 「僕にだって自分以外に大切なひとくらいいるさ。じゃなきゃ、いつまでも此処にいたりしない」
 「あなたってほんとうに大嘘吐きだわ」
 忌々しげに彼女は吐き捨てると、彼の瞳から視線を外した。

 「――ためしてみる?」

 何を、とは聞かなかった。
 あからさまに舌打ちをすると、彼女は彼を睨み付ける。

 「あなた、きらい」

 彼がそれをどういうふうにとったのかはわからない。



2

 情動的にこみ上げてくるそれは
 明らかに背徳的もので
 寧ろ、忌むべきものであり
 反射的に嫌悪感すら抱く
 
 けれど
 
 限りなく、本能に近いもの

 
 「欲しいか」

 男と女は凸凹であらわされ
 それは同じものと合わせて初めて完成する

 そういったのは、大昔の哲学者で。
 紀元前が過ぎた辺りからこの理屈は通用しなくなった。
 いつしか遺伝子レベルに組み込まれた情報は
 それから何千年たっても支配する。
 
 「……いらない」

 きもちがわるい。

 身体の中に異物が入ってくるのも
 自分のコピーが造られるのも
 あきらかに、異常だと思われるこの感情も

 「じゃぁ、やらねぇ」

 急速に冷えていく熱が、どこか名残惜しげで
 それでもやはり安堵した。



3

 「それって、かなり不自然だと思う」
 というのが、彼のこたえだった。
 「好きな人に触れたい、触れられたいって思うのは自然なことだと思うよ?」
 「――……そう、なのか?」
 「うん。多分」
 タンブルとカッサを見てごらんよ。といわれたが、それは限りなく例外ではなかろうか。
 「……俺は、あまりそう思わない」
 「むー」
 生物学的な話をすれば、と彼は切り出した。
 「子孫を残すということが一番の使命なわけだけど、そのためには生殖行為をしなくてはいけない。生殖行為をするためには、相手がいないとできない。まぁ、単性生殖ができる器用なナマモノもいるけど、僕らは違うし。その相手を選ぶときに何が必要になるかというと、単純にいってしまえば、優秀な遺伝子なんだけど、そこで出てくるのがこちら側の価値観というかなんというか……どこに一番の趣を置くかで差が出てくる。それが好きな相手の好みってヤツだと思うんだよね。だから、それ以上に優秀な遺伝子とであえば、今の相手と別れる。だって、優秀な子孫を残したいモン」
 「そういわれると、身も蓋もないんだが……」
 「だけど、それに歯止めをかけるのが感情ってヤツでしょ」
 「――」
 「感情があるから、簡単に心変わりしない。その代わりに、簡単に相手にも心を許さない」
 そういうもんなんじゃないの?と彼は聞いてくる。
 「別に、君が好きな人がいるんだったら、それは異常でもなんでもないものだと思うけど」
 なんだかなぁ。と彼は呟いた。
 「それってそんなにいけないこと?」
 「普通なら、きっといけないことではないと思う」
 「だったら……」
 一瞬躊躇ったようだが、彼は言った。
 「それを無理矢理押さえ込む君の方が不自然だよ」



5

 「……っ」

 予想していた感覚に瞳を閉じて声にならない声をあげる。
 何度経験しても、自分の中に異物の捻じ込まれる瞬間の衝撃には慣れなかった。

 「っあ、……ふ」

 繰り返し抜き差しされて、その度にそれにあわせて腰を揺らし、声を出す。
 いつもそうだが、この間に相手は一言も口を聞かない。
 それどころか、呻き声一つ洩らさない。
 彼の顔にはいつもどこかで歪んだ笑みが浮かんでいた。
 こちらが耐え切れなくなって、喘いで、媚びて、ひたすらに欲しがるのを見て楽しんでいるのだ。
 相も変わらずタチが悪い。

 「ぃあ……ぁあ、あ、」

 今日は自分の傍にいてくれても、明日はいない。
 きっと、他の誰かをその腕に抱いて、自分が聞いたら一気に鳥肌の立つような台詞を囁くのだろう。
 そういう男なのだ、彼は。

 「…っ、タガー…、ぁ、もう…………」
 「5分43秒」

 大分慣れたな。
 と返ってきた。

 何が「慣れたな」だ。
 と言い返そうと思ったが、それは自分の声とは思えないような嬌声に消されていた。






ウラの板にちまちま書いてたヤツのログです。
基本的に5個でまとめるつもりです(今回4が無いのはパラレル阿呆設定で別に掲載予定だからです)。



1:ヴィクトリアとミストフェリーズ
ウチは、オモテではともかく、ウラはヴィクミスなのです。ミスヴィクじゃありません。ヴィクミスです。
攻めヴィクトリアがいるのは猫の同人ネット世界が広くてもウチだけかもしれません……ぎゃふん。


2:マンカストラップとラム・タム・タガー
ある意味エロをきちんと書こうと思い立った一つ。
すみません、こんなで。文中でいってる昔の哲学者はプラトンです、確か。ウチのタガーは割と甲斐性ナシです。


3:マンカストラップとミストフェリーズ
これはカプ云々ではなく内容が直接的だったから。ミストの台詞は相方との会話でウチラが出した愛の結論(笑)。
ウチのマンカスはある意味で恋愛感情とか、とにかく俗物的な感情全てを否定して、嫌悪しています(自分に対して)。


4:マンカストラップとラム・タム・タガー
目指せ、リリカルエロ(どこが?)!コレだけ見ると、タガーが人外外道にみえますがそんなことはありません(多分)。
つか、数えるなよ……。