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「てゆーかさ、君ってつくづくノーミソたりてないってゆーか、器用ビンボーってゆーか……頭悪いよね」 「いや、俺はお前のアタマのほうが心配……」 「そりゃどーも」 けらけらと笑うスキンブスシャンクスは今日は何故だか格段に機嫌がよい。 「――……お前、何しに来たんだよ?」 とラム・タム・タガーが睨むと、 「君の吠え面拝みに」 とすぐに返ってくる。 「一遍死んでこいや」 「うわ、いいねー、そのくそ嫌そうな表情。ちょーかわいいー」 「……たのむから、そのアタマ悪そうな喋り方をやめってくれ」 「あ、それムリ。是性分也」 怒ることも馬鹿馬鹿しくなり、タガーは溜息とともに肩をおとした。 マトモに会話を成立させようとした自分が馬鹿だった。 「お前はどうして今日に限ってそんなに幸せそうなんだ……」 と、ぽつんと呟く。 「そう?でも、一人が幸せだったら嬉しくならない?」 「いや……そこまでだとイライラする」 「『みんなが幸せになれたらいいなぁ!』」とか思わないわけ!?」 「幸せなのはお前の頭の中だ!!」 あぁぁぁぁ。と唸って頭を抱える。 今日に限って、本当にスキンブルシャンクスは機嫌がよい。 よりにもよって、今日。 ほんのちょっと前まで、世界は全てなくなってしまえばいいと思っていた今日。 「――君だって、幸せになってもいいんだよ?」 「あぁ、そうかい、ありがとさん」 あるべき状態に戻った世界はひどく味気なく。 自分で望んだものなはずなのに、色彩がない。 「だから、あんなに見張っときなっていったのに」 「は?」 静かな湖面のように動かない。 「盗られちゃったんでしょ?違う」 「――……」 静かすぎる。 「ねぇ、慰めてあげよーか?」 つまらない日常。 あるべき姿。 ヘテロ同士くっつくのはもううんざりだ。 「おとといきやがれ、くそったれ」 |
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ベッドの中で上体を起こし、傍らの卓のキセルへと手を伸ばし、火をつける。 深く煙を吸い、吐き出すと、眠っていたと思った彼女が声をかけた。 「煙草、吸わないで」 煙草?と聞き返すと、彼女はおもむろに手を伸ばし、口に咥えようとしていたものを奪った。 「コレ。嫌いなの、においつくし、目にしみるし、頭痛くなる」 煙草なんてこの世から消えてなくなればいいんだわ。というと、フン!と小さく鼻を鳴らす。 「随分手厳しいな」 「だって、身体にも悪いのよ」 そうか。とだけ頷く。 「どうでもいいんだが、煙草ではなくキセルだ」 「おんなじよ、そんなの」 と言う間に、彼女はキセルの火の始末を追え、灰皿の上でうっすらと火の気の残る灰をキセルの先端で親の敵だとでもいうようにぐりぐりと潰している。 「――……とにかく、今後一切、私の目の前では禁止」 「……善処しよう」 といい、抱き寄せてキスをしようとしたら思いっきり顔を曲げられた。 「煙草くさいからイヤ」 「……」 変な方向に曲がった首が痛い。 「――……そんなに嫌いか」 「大嫌い」 何故?と訊くと、「当たり前じゃない」とかえってくる。 「さっきもいったわよ。あんなの体に有害なもんばっかり。百害あって一利なし!」 「それだけじゃない、だろう?」 問うと彼女は一瞬だけ目を見張り、困ったかのように首を傾げた。 「それに答えるのも契約のうちかしら?」 「いいや。知りたいのは俺の趣味だ。嫌なら答えなくても構わない」 「あんまり、いい趣味じゃないわね」 彼女は苦笑すると、綺麗な髪を掻きあげた。 「私の依頼主は愛煙家が多いの。だから、もう、うんざり」 綺麗な白金色。 深海色の瞳。 真っ白な毛並み。 「だから、私、結婚するなら、絶対に煙草を吸わない人と結婚したいの」 青い瞳が、笑う。 「――――……おわかりかしら、将軍?」 「あぁ」 きっと、彼女は明日は違う男にこの笑顔を向けるのだろう。 そしてまた、同じことを繰り返すのだ。 |
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あえなくなるなら。 「手紙をちょうだい」 と彼女はいった。 そんなことは、無意味だ。 渡せるはずがないのだから。 「なら、私を思って手紙をかいて」 そんな情緒のあること期待されても困る。 そう思ったことが顔に出たのだろう。 彼女は苦笑すると 「中身の期待はしてないから」 といった。 「なんでもいいの。 今日のこと。 海のこと 船のこと。 あなたのこと。」 ただ、と彼女は続ける。 「それを書くときには、ぜったいに私のことを思って」 そして、彼女は船をおりた。 部下が連絡は取っているが、会ってはいない。 引き出しの航海日誌の脇の缶は、彼女に宛てた手紙でいっぱいになった。 今考えれば、それは彼女のことを書くことと同義だった。 |
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君が生まれた日 ぼくはただなくことしかできなかった。 ちいさなこのこがこれからひとりでどういきていくのかとか 世間がこのこをどうみるのかとか そんなちっぽけなことはどうでもよく ただこの瞬間にあたらしいいのちがうまれたのだと うでのなかにちいさなこのこのぬくもりがあるというそれだけで このこのたしかな鼓動と やわらかい呼吸 ただそれだけで それだけなのに、 しぜんと涙がでた。 |
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「ねぇ、スキンブル」 「んー?」 「何読んでるの?」 読んでいる本から視線を上げて、スキンブルシャンクスは答えてやる。 「『路線図でみるあなたの街の観光ガイド』」 「……ふぅん」 「何かいいたそうだけど、ジェミマ?」 「べつにー」 と、ジェミマは大して面白くもなさそうにそっぽを向いた。 列車のなんたるかを知らないお子様には仕方あるまい。 「――――……あのね、スキンブル」 「ん?」 ジェミマは、それでも何か気になることがあるようで、ちらちらとこちらをみては、再び話しかけてきた。 「あのね―――……はじめの一歩ってやっぱり大事だと思う?」 「は?」 はじめの一歩? 何の?とは訊くまでもなく。 ジェミマが気になる「はじめの一歩」なんざひとつしかないに決まっている。 とゆーことは、●●が××で……。 と、スキンブルシャンクスが頭の中を真っ白にしている間に、ジェミマは「あのね」と先を続ける。 「あのね、私考えたんだけど。やっぱり一番最初は女の子の方から声かけなきゃ駄目?映画とか小説だと逆なんだけど」 それはジェミマの読んでいるような少女向けの小説ではそうだろうが(何せ、あれに出てくる男性登場人物は女の子の憧れそのものなのだから)、現実ではそうでもないどろう。 「でも、ほら、私ってまだまだ全然子供でしょ?絶対にむこうは躊躇ってるのよね。ううん、遠慮してる」 「あのぉ……」 スキンブルシャンクスがつっこむ暇もないくらいに、ジェミマは一気にまくしたてる。 「てゆーか、かなり疑問なんだけど、どうしても我慢できないときとかどうしてるのかしら?やっぱり自慰?それとも赤線にでもいってるわけ?もしかして他に女がいるとか…………ねぇ、スキンブル、聞いてる?」 「――――……ごめん、おぢさんちょぉぉっとかなしくなっちゃったよ……」 「そう?」 きょとんとした顔でジェミマはいう。 間違っても、花も恥らうような思春期の乙女の口からぽんぽん飛び出していい単語ではない。 「で?どうなの?」 「何が?」 「決まってるでしょ!他に女がいるかどうかよ!!スキンブルなら知ってるでしょ!?」 しぎゃー。とでも威嚇されそうな勢いだ。 「別に、他に女がいるって話はきいたことないよ」 ありのままの事実を告げると、ジェミマは一瞬だけ「……そう」と、表情を曇らせた。 「なら、どうなのかしら?」 「あのね、ジェミマ。僕も一応男なんだよ……」 「だから訊いてるんじゃない」 さも当然といわんばかりだ。 いったい誰がこんな教育をしたのか。 「セーヨクの処理の仕方は教えてあげられないけど」 スキンブルシャンクスは苦笑し、ぱたんと本を閉じた。 「はじめの一歩のお話ならしてあげようか」 |
11:ラム・タム・タガーとスキンブルシャンクス。 んー。これ書いてるときはスキタガがブームだったんでしょーか?(何分一年以上前なので) 「みんなが幸せになれたらいいなぁ!」は確実に夢醒めを引きずってます。何故って、私のデフォルトがs木スキンブルだから……。 |
12:ギルバート(仮)とグリドルボーン 寝タバコはいけません。や、過去にウチの斜め向かいの家が寝タバコで火事になってるんで。 将軍とグリはもしかしたらキャッツで一番書きやすいカプかもしれない。 |
13:ギルバート(仮)とグリドルボーン 将軍とグリが続きました(いや、間にリーダー受け祭りが挟まってましたが)。 将軍は猫界一のロマンチスト、だといいなぁ。 |
14:マンカストラップ 前にも言った気がしますが、私の頭の中にはキャッツワールドで一本大きな時間の流れがあって。それに沿ってすべて創作をしています。なので、これは実はその流れとはずれてるのですが。 生まれたばかりのバブとリーダーをどうしても書きたくて。未補完です。いずれまた……。 |
15:スキンブルシャンクスとジェミマ リハビリ。ジェミマはおませな女子高生、というイメージで。これで、リーダー受け祭りのあの話につながります。 |