はらはらと雪が舞う。 んしょ。とシラバブはどこからか椅子を持ってきて、その上にのぼった。 一生懸命背伸びをしてみたり、ぴょんぴょん跳びはねている。小さな手足で何をしたいのかはわからないが、傍から見ていれば危なっかしくて仕方がない。 「バブ?何してんの?」 「ミスト」 あのね。といいながならも、やっぱり背伸びをしている。 「いちばんうえのおほしさまはバブがつけるの」 「あぁ」 意訳すると、「クリスマスツリーの一番上に星のオーナメントを飾りたい」である。 それでひたすら頑張っていたのかと納得する。 シラバブはそんなミストフェリーズのことなんぞお構いなしといったふうで、やっぱりな んとかツリーの上へと届かないかと手を伸ばし続ける。 暫くその光景を見守っていたミストフェリーズは、シラバブが疲れて座り込むのを見ると、苦笑し立ち上がった。 「バブ」 「?」 何処からか愛用の杖を取り出してシラバブへと向ける。 短く何事かを呟くと、ふいにシラバブの身体が宙へと浮いた。 「ミスト!?」 驚き瞳を丸くするシラバブににっこり頷いてやる。 シラバブも笑顔で返し、器用にツリーの上へキラキラひかる星のオーナメントを飾った。 ふわりと着地し、抱きついてくる。 「ありがとう、ミスト」 「お姫さまの願いとあらば」 嬉ししそうに笑うシラバブを見て、ミストフェリーズも顔をほころばせる。 「そろそろみんながくるね」 「間に合ってよかったね」 日も暮れて、恒例のパーティーをしに、教会へと街中のみんなが集ってくる。 外は雪。 「サンタさんにおねがいした?」 「さぁ?」 「しないの?」 「内緒」 バブは?と聞き返すと、「バブもないしょだよ」と返された。誰に似たのか、中々イイ性格に育ちそうである。 「――ここはいいから、マンカスの手伝いでもしておいで」 きっと今頃、苦労しょうな我らがリーダーはパーティー用の料理の準備や、ちびっ子たちに渡すプレゼントの準備で、文字通り『猫の手も借りたい』忙しさに違いない。それが、仔猫の手であってもだ。 「うん」 とてとてとて。と駆け出すシラバブを見届けると、ミストフェリーズは窓から外へと出た。 冷たい雪を踏みしめて庭の影にいくと、軽く地面を蹴り、宙へと舞う。 「一、二、三、四……――揃ってるね」 暗い宙から窓の中のみんなの数を数えて確認すると、杖を構えた。 今度は長く、詩のような言葉を紡ぐ。 完成された呪文とは、一つの詩であるといったのは誰であったか。 流れ出る言葉は詩。 詩は謡。 謡は魔法。 そして、魔法は呪文により魔術となる。 ミストフェ リーズは無造作に杖を一振りだけ振った。 「ぶっちゃけ、今日のサンタ当番って僕なんだよねー」 ははん。と一人で呟く。 杖の先からは一瞬だけ強い光が。 その後はただ、雪が。 魔術の光により色付き、光る雪が暗い空に舞う。 光に驚いたのだろう、みんなが外へと出てきた。 気付かれないように樹の影へと転移し、その様子を眺める。 あるのは、心地のよいざわめき。 あたたかい声。 そして、笑顔。 サンタクロースなんぞというものはなんて難儀だろうと思っていたが、何となくその職業理由というものがわかった気がした。 「――……メリークリスマス」 小さな黒猫が呟いた言葉を聞いたものは誰もいない。 |
20051225作。 20061224加筆。 去年、まだこっちの絵板が存在してたときに、絵板にクリスマス終了5分前に無理やり投下したヤツです。 こっちの絵板も消えてしまいましたので。まぁ、時効かと。 むこうの板を一年ほど遡ればログが出てきます(マテ)。 当時は何考えてむこうにも投下したのかわかりませんが、今考えたら、むこうにログが残ってて良かったです。 それにしても、むかしのものに手を入れるのは本当に難しい……(施しようのないくらいどうしようもないので)。 |